小原On-Line

CISMOR: 2007年10月アーカイブ

071021 二日目、第3セッションはタリク・ラマダーン氏に、第4セッションはノーマン・フィンケルシュタイン氏に発表をしていただきました。右の写真は、第4セッションのもの。左にいるのは、コメンテーターの村田先生です。
 今回は、全体を通じて、かなり密度の濃い議論を交わすことができたように思います。
 5年もやると、さすがに慣れてきて、まったく緊張しないのが恐ろしいほどです。5年前であれば、準備段階から四苦八苦し、1週間も前から妙に緊張したものですが、今や、CISMOR事務局が熟練の域に達し、ロジスティク関係はほとんどすべてを信頼して任せることができるようになりました。
 とはいえ、司会は妙に気疲れし、終わるとぐったりしているのがわかります。座っているだけなのですが、発言内容が、反ユダヤ主義やイスラエル批判におよぶと、緊迫したムードが漂い、内心ドキドキしてしまいます。イスラエル・パレスチナ問題やイスラエル・ロビー、イラク戦戦争の開戦理由などをめぐる議論は、さすがに一筋縄にはいきません。

 国際ワークショップ終了後は、先斗町の風南に行って、夕食会。外国人のゲストをよく連れて行く、雰囲気のよいお店です。

 帰宅する頃には、さすがにどっと疲れが出ましたが、月曜日はしっかりと授業があります。これから準備をします。(T_T)
 明日は、お昼からフランシス・フクヤマ氏の名誉学位授与式があります。講演会は、授業の時間帯と完全に重なるので、残念ながら行くことができません。ご都合つく方は、ぜひ行ってください。世界のフクヤマを間近に見る機会は、そう多くはないと思いますので。

071020_1 CISMORの国際ワークショップが、今日と明日行われます。
 初日の今日は、フランシス・フクヤマ氏(ジョンズ・ホプキンス大学)とヴァエズィー氏(イラン・バーゲロルオルーム大学)に発表してもらい、二つのセッションを行いました。
 今回、全部で4つあるセッションのうち、二つの司会を私がすることになっており、少々気疲れしますが、今日のセッションは非常に白熱し、実りある議論がなされました。

 フクヤマ氏はさすが、というべきか、非常にシャープな方でした。世のように投げかけられる質問にも、丁寧に答えられていました。
 フクヤマ氏の『歴史の終わり』『アメリカの終わり』は、まだ読まれていない方にはおすすめします。その主張に賛成するかどうかはともかくとして、現代アメリカのトップレベルの知性のあり方をかいま見ることができます。
071020_2  右上の写真は、レセプションのときに撮影したものです。中央にいるのがフクヤマ氏です。彼はまったく日本語をしゃべることができないのですが、その落ち着いた謙虚な物腰は、現代日本人が失ってしまった美徳を体現しているかのようでした。
 「ラスト・サムライ」と呼びたくなるような雰囲気をたたえています。映画「ラスト・サムライ」の続編があれば、トム・クルーズの代わりに、フランシス・フクヤマに主役をつとめてもらった方がよいと思うほどです。(^_^;)
 世界的に有名な、ほんとうに立派な先生だと思いますが、まったくえらそばったところがありません。

 フクヤマ氏との会話で教えられた、驚いた話しがあります。彼のお父さんは、アメリカで宗教社会学、教会史(特に会衆派)の教授だったのですが、1970年代にはじめて日本を訪れ、同志社大学神学部に半年間、客員研究員(あるいは客員教授)として滞在されていたそうです。意外にも身近なところにつながりがあったのだと驚いた次第です。

071007 10月6日(土)、同志社大学東京オフィスで、下記のようにCISMOR研究会を行いました。

テーマ「共存を妨げるもの―イスラームの場合」
・内藤正典(一橋大学大学院社会研究科教授)
  「西欧社会は、なぜ自ら共生の道を閉ざすのか」
・中田 考(同志社大学大学院神学研究科教授)
  「イスラームにおいて共存を妨げるもの」

 内藤先生は、オランダ、フランス、ドイツ、トルコなどの事例を織り交ぜで、現在のヨーロッパ社会の現状をわかりやすく説明してくださいました。きちんと現場を踏まえたリサーチを続けておられるだけに、聞いていて非常に安心感があります。
 ヨーロッパの中でももっとも寛容として知られていたオランダにおいて、この数年、もっとも多くムスリム関係の事件が起きていることの背景を納得して聞くことができました。イスラム嫌悪感情(Islamophobia)をかき立てているのは、一般的に極右勢力だと思われていますが、今、もっとも排外的なのはリベラル派だということです。ヨーロッパにおけるリベラル派の意味は、日本で使われているのと少し異なりますが、リバタリアン的防衛本能が、リベラル派を反イスラム的な方向に駆り立てているようです。
 オランダは伝統的に多文化主義政策をとっていますが、棲み分け的な多文化主義が硬直すると(領域間の流動性を失うと)、アパルトヘイトに酷似してしまう、という指摘も印象的でした。これは、これからの日本も学ばなければならない教訓の一つだと思います。
 各国政府が、ムスリムに対し divide and control 政策(よいムスリムと悪いムスリムに分ける)を教化していることも懸念材料として示されていました。

 中田先生は、カリフ制を樹立することが大事だという持論を展開されていました。理想を追求し続ける姿勢は立派です。

 最近、内藤先生が編著者として出された次の本はおすすめです。

『神の法VS.人の法―スカーフ論争からみる西欧とイスラームの断層』(日本評論社)

You are the
 th Visitor
 since 01/07/2004.

自己紹介

近  著

2013年10月

    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

CISMOR: 2013年10月: 月別アーカイブ

月別 アーカイブ