小原On-Line

CISMOR: 2006年11月アーカイブ

061105_1 今日は、国際ワークショップの二日目のプログラムが行われました。午前中は、ヨーロッパにおけるユダヤ教の問題、特に反ユダヤ主義についてのセッションが行われ、午後には、「ヨーロッパはなおキリスト教世界なのか」というテーマでのセッションが行われました(私は司会を務めました)。
 今日は、たまたま同志社のリユニオンの日と重なり、国際ワークショップの会場となっていた新島会館の隣にある新島旧邸には、たくさんの人が訪れていました。
 私もお昼の休憩時間を利用して、かなり久しぶりに新島旧邸を見学しました。右の写真は、新島襄が使っていた机です。

061105_2  二日間のワークショップを通じて、ある程度わかっていたつもりになっていたヨーロッパに対して、認識を新たにされたり、思っていた以上に複雑な事情を抱えていることを痛感させられました。
 EUの今後について考えてみても、前途多難とも言えますし、壮大な実験を行っているという意味での期待感もあります。
 ヨーロッパが「ポスト・キリスト教時代」に入っているということは、十分に認識できました。しかし、それが宗教的な多元性の拡大や、イスラームをはじめとする信仰覚醒運動などと密接に結びついていますので、宗教の問題を抜きにして、ヨーロッパが抱える問題の深部を理解することはできません。
 内藤先生がふと口にした「ヨーロッパは、なぜ他者を差別(※反ユダヤ主義やイスラム嫌悪感情等のこと)することによってしか、自己規定できないのだろうか」という、ある種のいらだちを含んだ発言を重く受けとめました。これは、ヨーロッパに限定される問題ではないにしても、その問題性を如実に語る数々のヨーロッパの事例に学びながら、我々の教訓にしていかなければならないと感じました。

061104_1  CISMOR国際ワークショップの初日を無事終えることができました。今年は、ヨーロッパに焦点を当てています。ある意味、宗教が関連したやっかいな事件は、アメリカよりヨーロッパにおいて多発しています。しかし、ヨーロッパのことはアメリカと比べると、あまり十分には紹介されていないというのが現状であると思います。

 午前中の公開シンポジウム(右写真はその一場面)には200名近い来場者がありましたが、おそらく多くの来場者は、ヨーロッパの現実の一面を知ることができたと思います。
 公開シンポジウムの概要を説明するのは大変ですが、CISMOR講演会の常連のSさんより、的確な感想をいただきましたので、内容説明の代わりに紹介させていただきます。

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ヨーロッパの状況がよく分かるシンポジウムだったと思いました。
特にラマダーンさんとボザルスランさんの間の応答を興味深く聞きました。

現実には混合主義が進み日々変化しているし、改革の方向性にあるというボザルスランさんに対し、認識を同じくしながらも「しかし、どこまで?」というラマダーンさんの問いは、とても重要だと思いました。
ムスリム内部での対話と共に、外部との対話も大切だと感じます。

ヨーロッパの寛容概念が「受け入れるが認めない」ということ、ムスリムは世俗主義を「民主主義ではなく独裁主義」と認識してきたということなど、知ることができました。

クリストファーセンさんの「ヨーロッパの市民が宗教のみで再定義されてしまうのではないか」という恐れは、私たち日本においても、様々な細部の差異で区別(差別)してしまうことと似通っているという印象を持ちました。

最後にラマダーンさんの「草の根レベルでも共同作業が必要」ということを聞いて、私のような一般の市民が、知識を得る目的だけでなくて、このシンポジウムに参加する意味を見いだせて、嬉しく思いました。

公開していただいて、ありがとうございました。

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061104_2  午後はクローズドなワークショップが続きました。タリク・ラマダーン氏がスピーカーとなり、2時間近い質疑応答がなされました。
 ラマダーン氏は、ヨーロッパ在住のムスリムとしてはもっとも知名度が高い人物ですが、非常に気さくで、シャープな思考の持ち主でした。
 こういう人がもっと多くいれば、ヨーロッパにおけるイスラムの位置づけも大きく変わっていくのではないかと感じさせられました。
061104_3 右の写真は、レセプションのときに撮ってもらったツーショット写真。彼はアメリカ政府から入国拒否されているのですが、「私と一緒の写真がアメリカ政府にわたったら、あなたもアメリカに入国できなくなるかもしれないよ」と冗談を言っていました。
 こういう写真を撮るのはいかにもミーハーな感じがしますが、内藤正典先生(一橋大学)もラマダーン氏とのツーショットを望まれ、私が撮影しました。

 ちなみに、内藤先生のヨーロッパ通ぶりには、ヨーロッパからの参加者も驚いていました。さすがです。

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