先日、Yokoさんがコメントで紹介してくださっていた岩波新書の新刊『多神教と一神教――古代地中海世界の宗教ドラマ』を購入し、読み始めています。
メソポタミアも含む古代地中海世界を舞台として、様々な神話にあらわされてきた神々の物語を生き生きと描写しています。古代神話になじみのない人は、次々出てくる神々の名前やエピソードに面食らうかもしれませんが、そこがおもしろい点でもあります。
読み始めたばかりなので、まだこの程度のことしか言えませんが、多神教世界に現れてきた一神教のことについても言及されていくようです。
著者は冒頭近くで次のように強調していました。
「多神教と一神教の世界は必ずしも単なる二者択一的なものではない。このことは本書を通じて覚えておいてほしい。」
古代地中海世界においては、というコンテキストを意識しておく必要はありますが、興味を引くポイントの一つです。
さて、たまたまこれに関連するようなタイトルの論文を小原克博 On-Line に掲載しておきました。「一神教と多神教をめぐるディスコースとリアルポリティーク」(『宗教研究』第345号)です。
これは3月にIAHR国際大会で発表した内容をブラッシュアップしたものです。一神教と多神教をめぐる言説の分析や、一神教と多神教の相互関係について論じています。難解であるとは思いませんが、かなり「ひねり」を効かせている箇所もありますので、気楽な読み物というわけにはいきません。しかし、現時点でわたしが言いたいことの多くを盛り込んでいますので、関心のある方は、がんばって読んでみてください。
上述の本とは異なる視点からですが、「多神教と一神教が二者択一的なものではない」ことも論じています。