本や雑誌の紹介が続いていますので、ついでにもう一冊。
目下、フランスで大統領選挙の開票作業が進んでいますが、フランスの政教分離に関するものとして、次の本はおすすめです。
工藤庸子『宗教 vs. 国家――フランス〈政教分離〉と市民の誕生』講談社、2007年(講談社現代新書 1874)。
私が担当している大学院ゼミの一つで、今学期、政教分離を扱っているのですが、そのリーディング・アサインメントとしてこの本を指定しました。
政教分離の多様性を考えるとき、厳格な分離の典型例としてフランス型政教分離があげられますが、その成立経緯についてわかりやすく論述した本はあまり多くありません。
フランス革命によって、共和国の「ライシテ」(非宗教)の原則が一気にできあがったわけでなく、国家による宗教統制などの紆余曲折を経て、ライシテが選び取られていった経緯を上記の本は教えてくれています。
単に、宗教(カトリック) vs. 非宗教 という二項対立でライシテを理解することが間違いであること学ぶことができるでしょう。
20世紀前半までが叙述の対象ですが、それをもとにして、スカーフ事件にも言及しています。
ヨーロッパの今後を考える上で、フランスの状況からは目が離せません。