小原On-Line

講義・講演: 2005年7月アーカイブ

 今日、宗教学6「戦争・正義・平和―宗教多元社会の中で」の最後の授業を行いました。来週は香港にいるので、来週は休講にしています。
 この授業は「神学部オープンコース」の科目にもなっていますので、インターネット経由で、様々な方々に見ていただいています。わたしは、こういうことを推進しておきながら、実は、ディスプレイと90分向き合って講義や講演を視聴するという経験を一度もしたことがありません。ですから、毎回、きちんと見てくださっている方々からのメールをいただくと、動画配信をやっていてよかったと思うと同時に、その集中力に感心させられます。

 今日は日本の近代史、特にナショナリズムや大東亜共栄圏イデオロギー、聖戦、国家神道などについて触れました。しかし、最終回ということもあって時間の余裕がなかったため、「とにかく、これを読んでください」とお薦めしたのが、高橋哲哉『靖国問題』(筑摩新書)です。
 この本は、非常によく売れていると聞きますが、それが納得できるだけの内容があります。まず何と言っても、わかりやすい。第一次資料を丁寧に参照しながら、それを分かりやすく分析し、同時に、全体的な歴史的文脈の中に性格にその分析をマッピングしていきます。

 伝統的な神道が、どのようにして国家神道へと作り替えられていったのか。また、靖国の歴史を振り返ると、靖国と関係している戦争が決して太平洋戦争だけではないこと、日本の戦争責任を太平洋戦争だけに限定することは、問題を矮小化することになりかねないことを教えてくれます。キリスト教や仏教などが、国家神道に巻き込まれ、ナショナリズムに積極的に奉仕していった有様も描写されています。

 叙述内容については異論を唱えたくなる人もいることでしょう。しかし、その是非はともかくとして、靖国問題の論点を明晰に整理している点で、非常にすぐれた本であると、わたしは思います。

■Amazon, 高橋哲哉『靖国問題』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4480062327

050703a 金曜日は1時間目から3時間目まで授業がある日なのですが、3時間目が終わってすぐ新幹線に乗って、軽井沢に向かいました。駅から徒歩10分ほどの軽井沢プリンスホテルに宿泊しているのですが、到着した時間が9時を回っていたので、あたりはお店も閉まり真っ暗で、暗い夜道をとぼとぼと歩いていきました。
 翌朝起きてはじめて、非常にすばらしいロケーションにあることがわかりました。右の写真は部屋から写した風景です。森に隣接する形でホテルがあります。

 土曜日の午後、社会経済生産性本部が主催するThe Challenge of Leadership Programのための講演をしました。このプログラムは、企業の幹部候補生のための集中プログラムのようなもので、その中に政治や科学や宗教の講演が組み込まれています。
 ちなみに、午前中は国際基督教大学の村上陽一郎先生が担当されました。その前には、佐々木毅氏(前東大総長)の講演もあったようで、かなりの一流どころの講師が集められています。講師の名前が並んでいる表を見ると、わたしのところでガクンとグレードダウンしているようで、申し訳ないな~と思いますが、わたしとしては精一杯やらせていただくしかありません。
 「宗教――グローバル化する世界における価値の衝突」というタイトルで話をしました。

050703b 参加者は遠くは岡山の方からも来られていましたが、いずれもシャープな問題意識を持った方ばかりで、90分の質疑応答もあっという間に時間が経ってしまいました。同じような話をしても、さすがに、若い学生さんと受け止め方の視点が違うな~と感じ、わたし自身、大いに刺激を受けることができました。(左の写真はショッピングセンター街の遠景)

 土曜日の昼食は、参加者の方々および村上先生とご一緒させていただいたのですが、村上先生に国際基督教大学のCOEプログラムの様子を聞くと、さすがに大変そうでした。COEの中間評価が6月に行われ、その結果が10月に新聞等でも公表されますが、それが出るまでは、ちょっと落ち着かないですね。果報は寝て待て、といきたいところですが、ゆっくり寝る余裕はなかなかないですね。(^_^;)

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近  著

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