小原On-Line

小原克博: 2007年6月アーカイブ

070630 今日は、CISMORの公開講演会「アパルトヘイト廃止後の南アフリカと原理主義」が行われました。講師は、ディビッド・チデスター氏(ケープタウン大学教授)。

 南アフリカの事情については、日本ではほとんど知られていないだけに、アパルトヘイトの前後の変化について聞くことができたのは有意義でした。
 私の関心を特に引いたのは、原理主義勢力の位置づけや役割が時代によって、大きく変化してきたという点です。
 1970年代のキリスト教原理主義グループ"Jesus People"は、その宗教に保守的でありながら、社会的にはリベラルで、反暴力、非人種差別的、寛容という特徴が、当時の政府から危険視されたとのことでした。
 1980年代以降は、アメリカの原理主義勢力(ジェリー・ファルウェルら)の影響が強まり、彼らは強硬な南ア政府のやり方に賛辞を送っています。
 1994年にアパルトヘイト政策が撤廃され、南アは新しい時代を迎えますが、宗教の多様性を生かしながら、それらを統合した国家形成を目指します。このあたりは、米国と比することもできますが、まだまだ実験途上にあるという感じです。

 アパルトヘイトを正当化していたのも教会(オランダ改革派教会)であれば、アパルトヘイトを撤廃した立役者も教会勢力(ツツ司教ら)であったという点に、教会が果たしてきた歴史的役割の両義性を感じさせられました。

 講演に対するコメンテーターを磯前順一先生(国際日本文化研究センター)にしていただきました。原理主義の問題を、遠い国の出来事とするのではなく、日本にも内在する問題として自覚することを促されていたのが印象的でした。

 講演会終了後、チデスター先生らと膳處漢で夕食を共にしました。独特な雰囲気があって、外国人のお客さんにはお勧めの場所です(中華ですが、かなり京都風)。
 南アの様子をさらに詳しく聞くことができ、非常に貴重な時間となりました。

070629 引き続き、赤ちゃんシリーズ。
 トマトの赤ちゃんです。実は、右の写真はミニトマトなので、大人になっても大きさはあまり変わりません。赤くなるのは、もう数週間先です。
 トマトは4種類ほど植えています。普通サイズのトマトとミニトマトが半分ずつです。
 トマトは生長が異常に早い! 右に左にどんどん茎を伸ばしていき、トマトを植えているあたりは、ジャングルのように密集しています。
 自家製トマトはみずみずしく、おいしいです。

 現在、Neesima Room で 「同志社と戦争」展が開催されています。私はすでに3度行きました。小さな展示ですが、戦時中の同志社の様子を遺品等を通じて知ることができます。
 この展示との関係で、本日、次のような公開講演会が行われ、私も参加しました。

駒込 武(京都大学大学院教育学研究科准教授)
「戦時下の同志社―帝国日本の歴史の中で考えるー」

 この時期の同志社の様子について、私はまだ十分勉強していないので、今日の講演はとても、ためになりました。
 一言で言えば、戦時体制に巻き込まれる中で、同志社も、御真影を安置したり、神社参拝をしたりしました。御真影をおさめた奉安殿が、今出川キャンパスのど真ん中にあったということを、今日はじめて知りました。

 1941年には、戦時体制に合わせる形で、同志社の憲法ともいえる「財団法人同志社寄付行為」が改正されました。たとえば、第4条は以下の通り。

改正前:本財団ノ維持スル学校ハ基督教ヲ以テ徳育ノ基本トス
改正後:本法人ノ維持スル学校ハ皇国民ノ錬成ヲ目的トシ之ニ適合スル基督教ノ精神ヲ採ツテ徳育ニ資ス

 先日もこのブログで話題にした「徳育」がここでも出てくるのですが、戦時下において、皇国的精神が徳育の中に組み込まれたことが、条規改正からも一目瞭然です。

 徳育とは何か? 日本の教育界では、今後話題になっていくのでしょうけれども、歴史的にも、なかなか意味深長な概念です。これから、少しずつ整理していきたいと思っています。

070626 先日、右のスリッパを衝動買いしました。
 360円! 安いでしょ~
 私が衝動買いできるのは、せいぜいこの程度の値段です。

 小原克博 On-Line に、「道徳は教えられるのか?」(「現代のことば」)(『京都新聞』2007年6月21日、夕刊)を追加しました。
 道徳教育が「徳育」として科目化されるようですが(教育再生会議での審議)、それに対する批評となっています。
 新島襄が「徳育」を同志社教育の基本とした、ということを授業で教えていた頃に、ちょうどこの政府主導の「徳育」の話しに出くわしました。両者の違いについて、今後、きちんと整理していく必要があると考えています。
 新島襄は官立の教育に対するある種のアンチテーゼとして「私学」同志社を構想しました。同様の課題が、時代を超えて、今新たに問われているような気がします。

070623 植物の赤ちゃんシリーズが続いていますので、ここで、動物の赤ちゃんを紹介。今日は、ハムスターの赤ちゃん。
 生後2ヶ月のスノーホワイトという種類のハムスターです。毛が生えていない(目も見えていない)、本当の赤ちゃんの状態は生後2週間ほどで、そこからあとは、小さいながらも立派なハムスターです。
 もう一匹、大きいハムスター(ジャンガリアン)がいます。両方ともメスです。
 以前(といっても、7,8年も前ですが)、オスとメスのハムスターを飼っていて、猛烈にたくさんの赤ちゃんを産み、「ねずみ算式」に増えていく恐ろしさを体験しました。それに懲りて、つがいでは飼わないことにしています。
 生まれたてのハムスターの赤ちゃんは、本当にかわいいのですが、その後の世話が大変です。
 2匹くらいでちょうどいいかな、という感じです。
 ちなみに、ハムスターはじっとしないので、写真を撮るのに苦労しました。

 昨日、私の大学院クラスで、Archie Lee先生(香港中文大学)に公開授業を担当していただきました。返還10周年を迎えようとしている香港の様子、中国本土との関係を交えながら、アジア神学の課題について語っていただきました。

 香港と中国本土の関係を、バビロニア捕囚後の「帰還のイスラエル」と、エルサレムに残ったイスラエルとの関係において説明されていたのが印象的でした。香港の歴史事情をテキスト解釈上のコンテキストとするだけでなく、香港返還をめぐる出来事そのものをテキストとして解釈していく cross-textual な方法論を示されていました。

 授業の後、寒梅館で食事をし、3時間弱にわたって、中国における教会事情、キリスト教研究事情について聞きました。大学院レベルの教育は、既存の大学院に加え、どんどん新設されている独立大学院や研究センターが担っています。そうした新設の教育プログラムには、必ずといってもよいほど、キリスト教研究の学科やコースがついているとのことで、キリスト教を専門的に学んでいる中国人学生の数は半端ではなさそうです。

 中国におけるキリスト教を取り巻く変化は、思っていた以上に進んでいるいるようです。本腰を入れて、中国のキリスト教事情や神学の動向を調べてみたいと思いました。

070620 赤ちゃんシリーズの続きです。
 今日はキュウリの赤ちゃんを紹介します。 まだ、鉛筆の太さもないほど小さいです。これが1ヶ月もすれば、かなり立派なものになりますので不思議です。
 赤ちゃんの時代は、写真の通り、まっすぐなんですが、大きくなるにつれ、中には激しく曲がるものも出てきます(人間も同じ?!)。
 もちろん、まっすぐなものもあります。なぜ、違いが出るのかは、よくわかりません。ただし、形状によって味が変わることはありません。曲がったものも美味ですが、店頭では外見重視なので、まっすぐなものばかりです。
 「人間見た目が9割」とか言われていますが、人間もキュウリも、見た目に惑わされず、中身を味わうことが大事だと思いますけどね。

070617  6/16(土)CISMORの「日本宗教から一神教への提言」研究会が行われました。
 今回は、磯前順一先生(国際日本文化研究センター)に「〈日本の宗教学〉再考」というタイトルで発表していただきました。
 今となっては当然の如く使っている「宗教」という言葉は、明治時代にReligionの訳語として用いられ始めましたが、実際には、その意味内容はかなり変遷しています。時代精神を映しながら意味を変えてきたと言えます。
 また見方を変えれば、「宗教」がどのようなものとして理解されていたかを考察することによって、それぞれの時代における社会の様子をのぞき見ることもできるわけです。
 同様に「宗教学」も一筋縄には整理できませんが、そうした学問史研究も日本ではまだ十分ではない、ということでした。
 磯前先生はすでにたくさんの著作を著されていますが、どれも密度が濃くて驚かされます。

 佐藤優『国家と神とマルクス』をざっと読みました。「絶対的なものはある、ただし、それは複数ある」と語ってきた著者にとって並存する絶対的な3項、すなわち、日本国家、キリスト教、マルクスが書名の背後に意図されています。
 ただし、本文でこれらががっちと展開されているわけではありません。これまで、佐藤氏が『月刊日本』や『情況』という(おそらく一般読者にはあまり縁のない)雑誌での対談や原稿をまとめたものです。
 獄中での読書体験記は興味深く、半端な読書力でないことがわかります。

 「私にとって小菅(東京拘置所)の独房は、かつて得た中で、同志社大学神学館二階の神学部図書室と並ぶ、読書にとって最高の環境だった。」

 こういう表現にも見られるように、神学部のことがかなり頻繁に出てきますし、また、佐藤氏のキリスト教信仰がストレートに語られています。

 ちなみに、神学部図書室は今年の夏、大改装を予定しています。壁をいくつかぶちこわし、かなり大きなスペースを確保し、さらに良好な読書環境、研究環境を提供する予定です。

070613 暑い日が続くと、植物はぐんぐんと生長します(雑草も)。
 右の写真は、つい10日ほど前に人工授粉したばかりのキーウィ。親指大の実ができています。50個ほどできていますので、収穫が楽しみです。収穫時期は11月なので、まだだいぶ先ですね。
 キーウィには雄木と雌木があって、人工授粉させなければ実はなりません。今回、雌花が咲き始めた頃に、まだ雄花が咲いていなかったので、少々焦りました。雌花が散ってしまっては、受粉のしようがありませんから。
 何とか間に合って、順調に育っています。

 ほかにも果樹や野菜が実を付けはじめていますので、追々、それらも紹介していきたいと思います。

 春学期の講義科目「戦争・正義・平和――宗教多元社会の中で」において、学術的な参考文献の他、戦争やそれに関する世界観を考えてもらうために、関連する映画やマンガなどを折に触れて紹介しています。
 映画では「ガンジー」「マルコムX」など。マンガでは、手塚治虫の「火の鳥」などを強く推薦しました。
 昨日の授業では、学生からのコメント・カードに「ガンダム・シリーズでも戦争のことを考えさせられた。他におすすめのマンガがありますか」という質問があったので、「風の谷のナウシカ」の映画ではなく、マンガ全7巻を紹介しました。
 映画では、2巻の途中くらいまでをうまくまとめていますが、これでは、ナウシカの奥深い世界を知ることは到底できません。
 人間と自然との葛藤、戦争の原因だけでなく、救済、終末思想、メシアニズム、母性の両義性、善と悪の非二元論的関係、等々、多くのことを考えさせられます。
 ただし、深読みしていくためには、それなりの知識が必要かもしれません。
 百聞は一見にしかず。まだの方には一読をお薦めします。 

風の谷のナウシカ(Amazon)

 サーバーの更新手続きをした際、日本語ドメインの1年間無料サービスがあったので、興味半分で申し込みました。小原克博.jp というURLでも、www.kohara.ac 同様、小原克博 On-Lineにアクセスできます。
 ドメイン取得は、ほとんどの場合、「早い者勝ち」なので、一応取得しておきましたが、役に立つのかどうかはよくわかりません。
 IEでもFirefoxでも新しいバージョンでは、日本語ドメインに対応していますので、日本語ドメインが増えてくると、それを使う人も増えてくるでしょう。
 日本語のような2バイト文字でアクセスできるのは、英語一辺倒のインターネットの世界では妙な感じがしますが、一度クリックしてみてください。きちんとページが表示されます。

 昨日、香港中文大学(Chinese University of Hong Kong)の Archie Lee 先生が京都に到着し、久しぶりに再開しました。1ヶ月間、同志社の客員研究員として、京都に滞在されます。
 Lee先生の専門は聖書学ですが、アジアを主題とした神学研究もされています。「アジア神学」者と言ってもよいでしょう。
 アジア神学は、私も目下取り組んでいるテーマなので、Lee先生と意見交換できることはうれしい限りです。
 日本の神学では、アジアを主題化するということが、ほとんどなされてきませんでした。戦前のアジア主義、国体イデオロギーに取り込まれたアジア理解に対する反作用という側面も否定できませんが、いずれにせよ、アジアから日本の神学研究が孤立してしまっていることは、もはや看過できません。
 アジアへの視点は、これまでの私の研究の中にも萌芽的には存在しているのですが、まだまだ十分には展開できていません。これから、真剣に取り組みたいと考えています。

200707_l_1  小原克博 On-Line に、「宗教は人類最古の広報エージェント――古くて新しい宗教広報の現場」(『PRIR(プリール)』(宣伝会議)2007年7月号)を追加しました。
 6月1日発売の月刊誌です。関心ある方は書店にてお買い求めください。
 到着したばかりの紙面を開くと、イスラームは大塚和夫(東京外大)、キリスト教は芦名定道(京大)、仏教は島薗進(東大)、神道は石井研士(國學院)等々、といった絢爛豪華な執筆陣で、驚きました。
 私の雑文など、こっそりと入れておいて欲しかったのですが、なぜか、特集記事のトップに来ていました。
 広報の専門誌が宗教を特集するというのは、きわめて珍しいことだと思いますが、全体としては、おもしろいものに仕上がっています。

PRIR 7月号 (Amazon)
「宣伝会議」における『PRIR』7月号紹介

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