小原克博 On-Line に「新世代エキュメニズムの模索」(『はなしあい』2006年6月号)を追加しました。
『はなしあい』は、日本クリスチャンアカデミーの機関誌です。私は日本クリスチャンアカデミーの評議員になっていますが、申し訳ないことに、あまりお役に立てていません。
上記原稿では、エキュメニカル運動に関する、私のこれまでの関心や取り組みをわかりやすく記しています。
ちなみに、エキュメニカル運動というのは、教派(場合によっては宗教)の違いを超えて、共通の課題に取り組んでいこうとする運動のことを指します。
小原克博: 2006年6月アーカイブ
朝8時(!)から打ち合わせを始め、夜のレセプションまで長い一日でした。
午前中は公開シンポジウムでした。一人ひとりの割り当て時間を事前にきちんと説明していたのですが、誰も守ってくれないっ!! さすがに焦りました。
イスラエル・パレスチナ問題に関心を持っている人にとっては、今日的な事情に触れる、よい機会になったと思います。
岡真理先生(京大)のコメントも、よかったです。イスラエル国家を大前提にした話の流れに抗して、「犠牲者」を一つのキーワードにした鋭い切り口を提供してくださったように思います。
午後はクローズドのワークショップ。ここでも、いろいろな論点が出され、また、問題の解決策などもいくつか提起されていましたが、なかなか簡単には落ち着きません。イスラエル人においても、パレスチナ人においても、内部的な多様性・葛藤・緊張関係がありますから、万人が納得する解決する方法など、おそらくあり得ません。どういう形でよき妥協点を見いだしていくのかが問われていると言えるでしょう。
私は、アッバス議長が主導している、イスラエルの承認を問う住民投票のことについて質問しましたが、ハマスが期待しない結果になった場合、ハマスとPLOの間で内紛が起こるのではないか、との返答をいただきました。こういう結果を最大限避ける努力を双方はしなければならないと思います。もちろん、イスラエルがハマスと対話しようとする姿勢を示すことも必要でしょう。
今週土曜日、下記のように公開シンポジウムが予定されています。
イスラエル人2名、パレスチナ人2名の組み合わせで行います。限られた時間の中で、どこまで突っ込んだ議論ができるのかはわかりませんが、現場の雰囲気の一端は感じ取ることができるのではないかと思います。ちなみに、司会は私。
関心のある方は、ぜひお越しください。逐次通訳ではなく、同時通訳なので、議論に集中できると思います。
■公開シンポジウム
「パレスチナとイスラエルの対話――この1年を回顧する」
日時:2006年6月24日(土)9:30-12:00
会場:同志社大学今出川キャンパス 寒梅館ハーディーホール
パネリスト:エヤル・ベンアリ氏(ヘブライ大学教授)
サイード・ザイダーニー氏(アル・クドゥス大学教授)
ワリード・サーレム氏(パノラマセンター・エルサレム・オフィス代表)
マリオ・シュナイダー氏(ヘブライ大学教授)
(入場無料/事前申込不要/同時通訳あり)
小原克博 On-Line の「新聞・雑誌記事等」の「新聞取材記事」に「国際社会の「宗教間対話」糸口さぐる」(『朝日新聞』2006年6月20日、夕刊)を追加しました。
「心の研究最前線」というコーナーの記事です。
私の研究課題だけでなく、大学院のゼミや「京都・宗教系大学院連合」についても触れられています。
今日は、京都中央チャペル(ペンテコステ系)で説教をし、午後には「ダ・ヴィンチ・コード」の講演をしました。
ペンテコステ系の教会での説教は初めてでしたが、讃美や祈りにあふれたノリノリの礼拝は、とても新鮮でした。
「ダ・ヴィンチ・コード」講演会は、『ハーザー』というペンテコステ系の月刊誌の編集長・笹井氏との組み合わせで、案内チラシによれば「保守派VSリベラル派のガチンコ対談」ということになっていました。実際、保守派の人々の集会に、私のような「リベラル派」と言われる人間が招かれるのは、きわめてまれで、その意味では、きわめて意味のある集会であったと思います。
保守派の方々が「ダ・ヴィンチ・コード」をどのように見ておられるのかがよくわかりましたし、また、日本ではキリスト教保守派といっても、いわゆる福音派とペンテコステ派との間には、何かと距離があることも理解することができました。ちなみに、アメリカではペンテコステ派もエヴァンジェリカル(福音派)を名乗っており、両者はかなり緊密な関係を持っています。
先週土曜日に同志社で行った講演会の内容を下敷きにしながら、保守派の主張を意識した話をしました。保守派の方がリベラル派に対して抱いているある種の思い込み(誤解)を、多少は修正できたのではないかと思います。
保守派とリベラル派の対話というのは、どの教派・宗教にとっても、難題の一つになっています。その意味では、この種の対話を継続していくことができればと願っています。
タミーミー氏の講演会「中東紛争の根源」に参加しました。イスラエル・パレスチナ問題は政治的問題であることを明快に述べられました(宗教が問題の発端ではないということです)。
終始一貫して主張されていたのは、イスラエルを国家として認めることは、1948年にパレスチナ人が自分たちの土地を追い出されたことを承服することと同義であり、決して認めることはできないということでした。
近々、パレスチナ自治政府のアッバス議長がイスラエルを承認するかどうかの住民投票をすることについても言及され、結論的には、これは時間の無駄遣いだということでした。基本的にはハマス寄りの主張を展開されていたわけですが、なぜ多くの人がハマスを支持しているのかについて、少しわかったような気がしました。
少なくともハマスをテロリスト集団と決めつけ、援助をストップし、話し相手としても認めない、というのでは埒があかないでしょう。
来週土曜日、「パレスチナとイスラエルの対話――この1年を回顧する」という公開シンポジウムを開催します(→CISMOR)。ここでは、二人のパレスチナ人と二人のイスラエル人をスピーカーとしてお迎えしますが、その前に、タミーミー氏の意見を聞けたのは非常によかったです。
ちなみに、タミーミー氏は7月上旬にロンドンで開催される Islam Expo のオーガナイザーでもあります。
講演会のあと、三条河原町のトルコ・レストランで夕食を共にしながら、あれこれ楽しい会話を交わすことができました。さすがにヨーロッパにおけるイスラーム事情については、よくご存じでした。
タミーミー氏によれば、イスラームに対してもっとも敵対的なのはフランスとのこと。反対に、イスラームを受け入れる努力をもっともしているのが、英国とスウェーデンとのことでした。
ヨーロッパの多文化主義や「ヨーロッパ的ムスリム」といった考え方にも批判的で、結局、それらは支配的な価値の押しつけであり、「よいムスリム」と「悪いムスリム」を選別するための思想だと手厳しく批判していました。
大いに刺激を受けた一時でした。
下記のように今週土曜日、講演会が予定されています。
これから立て続けにイスラエル・パレスチナ問題に関係する講演会が行われる予定です。
講師は大物揃いですので聞き応えがあると思います。イスラエル・パレスチナ問題に関心のある方は、ぜひお越しください。
公開講演会 「中東紛争の根源」
日時:2006年6月17日(土)14:00-16:00
会場:同志社大学 今出川キャンパス 神学館3階礼拝堂
講師:アッザーム・タミーミー氏(イスラーム政治思想研究所(ロンドン)所長)
(入場無料/事前申込不要/逐次通訳あり)
公開講演会「『ダ・ヴィンチ・コード』を読み解く」を「神学部オープンコース」に追加しました。
当日の配付資料を掲載しています。講演会の全体を動画(ストリーミング・メディア)としてご覧いただけます。
スライドやアニメーションが多く、コンテンツ作成には苦労しましたが、その分、お楽しみいただけると思います。
■神学部オープンコース
http://theology.doshisha.ac.jp/opencourse/index.html
小原克博 On-Lineに、キネゾー(キネマ旬報 臨時増刊号:ダ・ヴィンチ・コード特集)に寄稿した解説記事を掲載しました。この増刊号は、なかなかよくできていますので、お薦めです。特に、映画と小説を比べながら楽しみたい方には最適だと思います。
下記リンク先の私の解説記事は、画面で読むのはちょっとしんどいので、印刷した上で読んでいただければと思います。
なお、先日の講演会の動画は今週中にアップする予定です。もうしばらくお待ちください。
■「『ダ・ヴィンチ・コード』ベストセラーの背景――なぜ本作がこうも論議を呼んだのか」、kinezo#2(キネマ旬報臨時増刊号)
ダ・ヴィンチ・コード講演会における配付資料を「神学部オープンコース」に掲載しました。
実物はリソグラフで印刷した、鮮明度の高くないものでしたが、掲載したのはカラー版です。
動画は、今週中には掲載できると思います。もうしばらくお待ちください。
土曜日午前中にもかかわらず、たくさんの来場者があり、講演会の開始前に、礼拝堂は入りきれなくなりました。450名ほどの来場者があったとのことで、神学部主催の講演会としては最高記録かもしれません。これほど多くの人がダ・ヴィンチ・コードに関心を寄せているとは、私の想像を超えていました。
結局、礼拝堂に入りきれなかった来場者は別教室に誘導し、そこでビデオカメラ経由の映像を液晶プロジェクターで見ていただきました。
しかし最終的には、その教室にも入りきれなくなり、廊下に来場者があふれ、教室から漏れ出る音声を聞いていただくことになりました。もちろん、礼拝堂の中にいた私は、こうした様子を、あとから教えてもらって知ったのですが、立ち見で最後までお付き合いいただいた来場者の方々には、不便おかけしたことを申し訳なく思います。
私も越後屋先生も、予定の30分ではまったく話はおさまらず、50分くらいは話したと思います。十分な時間を取ることはできませんでしたが、質疑応答も活発になされ、来場者の関心の高さをあらためて感じることができました。
講演の内容は、後日、神学部オープンコースでストリーミング・ビデオとして公開する予定にしています。もうしばらく、お待ちください。
いろいろな新聞に講演会の案内が掲載された結果、ダ・ヴィンチ・コード講演会について、尋常ではない数の問い合わせが、神学部事務室にあるそうで、事務室では明日の来場者が会場に入りきれなかった場合、どうするかと、かなり気をもんでおられます。
私は「何とかなるでしょう~」と、それほど深刻には考えていないのですが、ふたを開けてみないことには実際の所はわかりません。
会場となる神学館礼拝堂のキャパシティは260~270名ですから、通常は全く問題ないのですが・・・ どうなることやら。
結果は、またご報告します。
6月3日~4日、同志社大学を会場として「宗教と社会」学会の学術大会が開催されました。
6月3日は研究発表、6月4日はテーマセッションが行われ、4日には同志社のCOEプログラムとの共催テーマセッション(一般公開)が以下のように開催されました。
9:30-12:00
「一神教としてのユダヤ教・キリスト教・イスラーム――『原理主義』から見た相互認」
発表者:手島勲矢、小原克博、中田考(同志社大学)
13:30-17:00
「『原理主義』の実相――中東・アメリカ・EU」
発表者:臼杵陽(日本女子大学)、森孝一(同志社大学)、内藤正典(一橋大学)
私は午前中に発表、午後は司会で、出ずっぱり状態でしたので、かなり疲れました。しかし、一流の発表者を迎え、かなり啓発される機会となりました。
内藤先生とは久しぶりにお会いし、新たな刺激を与えられました。話し出すと止まらないので、ノリノリの様子はうれしい限りなのですが、司会者としては内心ハラハラしていました。
EUの加盟各国が、それぞれの抱える問題の解決のために自らの原理に立ち返ろうとしている一方、それが「イスラモフォビア」(イスラムへの憎悪感情)として収斂することが多いことを強調しておられたのが、印象的でした。
内藤先生の近著『イスラーム戦争の時代――暴力の連鎖をどう解くか』は、イスラーム世界の全般的な様子、そして、特にヨーロッパでの事情を概観する上で、読みやすく有益な本であると思います。
私は金曜日、月曜日とも授業が詰まっているため、先週末から月曜日まで、ほとんど休む間がなく、へとへとの週末・週初めとなりました。今週土曜日にはダ・ヴィンチ・コード講演会も控えており、なかなか休みたくても休めません。(∋_∈)
th Visitor
since 01/07/2004.