小原On-Line

小原克博: 2005年10月アーカイブ

 今日は朝から夕方まで、神学部の推薦選抜入試(自己推薦)の面接を行いました。これは神学部AO入試のようなもので、一次選考(書類選考)のあと二次選考(面接)を行います。面接には一人あたり30分弱時間をかけるので、かなりのことがわかります。

051029 それが終わって一息ついてから、夕方より、タイのパヤップ大学から同志社大学との交流協定締結を求めて来られた、同大学の学長・副学長と共に、同志社大学学長の八田先生を訪ねました。写真は学長室で撮影したもので、右からパヤップ大学副学長、学長、同志社大学学長、神学部の原先生、わたし、です。
 原先生は、21年前からパヤップ大学との関係を持っておられ、毎年のようにタイ・スタディツアーを行っている、タイ通です。わたしは、パヤップ大学副学長のプラディット氏と今年7月に香港で行われたアジア神学教育ワークショップで一緒だったので、数ヶ月ぶりの再会となりました。

 交渉は始まったばかりで、正式な学内手続きなどはこれからですが、パヤップ大学はタイのキリスト教主義大学の名門ですので、同志社が協定を結ぶには適切な相手です。そもそも、東南アジア地域における協定校がまだまだ少ないので、同志社にとってもよいチャンスだと思います。

 学長との面談の後、伝統的な長屋を改装した(最近のはやりです)京料理のお店で夕食を共にしながら、あれこれ歓談しました。
 タイの大学では、英語に次ぐ第二外国語として日本語を勉強している人が多いそうです。

 先週土曜日の講演会の朝はじめて気づいたのですが、ちょうど「時代祭」と重なっていました。土曜日とはいえ、異常に地下鉄が混んでいたので不思議に思っていたのですが、観光客らしき人の手に時代祭の説明パンフがあるのを目にして、ようやく混雑の理由を理解することができました。これから紅葉の季節にかけて、ますます観光客が京都を訪れることでしょう。

 「京都・宗教系大学院連合」(K-GURS)のサイトを更新しました。「協力団体」のページを追加したり、各種行事の案内を追加しました。K-GURSでは、宗教系大学院のほか、趣旨に賛同する様々な協力団体と連携し、これまでばらばらになっていた情報にまとまりを与えることができればと思っています。
 観光都市・京都は、伝統宗教が息づく宗教都市でもありますが、その魅力を現代的に再構成し、世界に発信し、グローバルな交流を展開していきたいと願っています。そうすることによって、時として「閉鎖的」と言われてきた京都の精神風土を、よりオープンなものに変えていくことができるでしょう。

 Yokoさんがコメントで紹介してくださっていたJR東海の「そうだ、京都に行こう」をはじめて見ました。日常的な視点から写された写真は、かえって新鮮ですね。
 紅葉の頃には、写真撮影に出かける時間的余裕があればと思うのですが、どうなることやら・・・
 「小原克博 写真館」も最近更新できていません。まだ追加していない京都の桜の風景もけっこうあるのですが、それだけアップするといかにも季節はずれなので、紅葉の風景と一緒にアップしたいと思っています。

051022 22日(土)、塩尻和子先生(写真)による「クルアーン解釈からみるジハード論」の講演がありました。クルアーン(コーラン)の章句からジハードの意味を説き明かし、イスラームには暴力を容認する論理がある、といった主張に対する反論が展開されました。
 質疑応答の中では「仏教は戦争をしないし寛容であるのに対し、聖書を読んでも、一神教は本来的に暴力と結びついている」といった意見もありました。来聴者の関心がどのあたりにあるのかがわかり、質疑応答も興味深かったです。
 わたしは司会をしていたのですが、「質問は簡潔に」といくら強調しても、長々話そうとする人は毎回います。(^_^;) わたしは途中でストップさせますが。
 今日の講演会は本当は全体で2時間の予定だったのですが、な、なんとわたしが勘違いをして1時間半で終わってしまいました。3:30終了の予定だったのですが、3:00過ぎには終わっていました。なぜだろう~?と思われた方も多かったと思います。疑問に思われた方、すみませんでした。わたしが終了時間を勘違いしていました。(^_^;)

 講演会の後は、場所を変えて、引き続きジハード論をテーマに研究会を行いました。この分野の専門家である中田先生に発表をしてもらいました。人手不足から、研究会の司会もわたしが行いました。司会はしゃべれないので、あまり好きでないのですが、仕方ありません。

 中田先生は、ジハードの用語法から、現代のジハード論までを幅広く話してくださいました。islamistの中にjihadistがおり、さらにjihadistからtransnational jihadist(例:アルカイダ)が誕生してきます。jihadistが「近い敵(背教のアラブ支配者)」の打倒を目指すのに対し、transnational jihadistは「遠い敵(アメリカとその同盟国)」をターゲットにします。近い敵か、遠い敵か、という優先順位が異なるため、この二種類のjihadist同士が敵対しています。

 ジハード理解は、シーア派とスンニ派では異なります。幸い、イランの専門家が3名もおられたので、シーア派のジハード理解についても聞くことができました(ちなみに、中田先生はスンニ派)。

 この分野、あらためて奥が深いことを痛感させられました。同時に、イスラーム世界におけるジハード論を把握しておかなければ、まともな中東政策や安全保障を打ち出すことはできないだろうと感じました。この点、アメリカは失敗しているように思います。
 アルカイダを追い込むためには、本来、イスラム世界の中で彼らを敗北させる状況を作らなければならないにもかかわらず、その状況そのものを悪化させ、アルカイダが暗躍する素地をかえって作ってしまっているからです。

 ぼちぼち考えていきます。

051016 10月15日(土)、同志社大学の寒梅館で宗教倫理学会の第6回学術大会が行われました。設立記念を兼ねた第1回学術大会は2000年に同志社大学で開催されましたので、同志社では5年ぶりの2度目ということになります。
 午前中は研究会やワークショップ、午後は公開講演会・シンポジウムが行われました。上の写真は、講演する大澤真幸氏(京都大学)です。大澤先生は社会学者として非常に幅広い分野で発言・活躍されている方ですが、論理の組み立ての中にキリスト教の考え方を取り入れる点でもユニークです。今回の講演タイトルは「宗教の普遍<論理=倫理>」だったのですが、圧倒的にキリスト教関係の話が多かったです。
 さすがにこの点については、「宗教の普遍というテーマにしては、キリスト教が中心になりすぎていませんか?」という質問が出ました。大澤先生の答えは、西洋の問題や世界の問題を扱う場合には、キリスト教から入るのが一番わかりやすい、やりやすい、というものでした。

 学術大会終了後、大澤先生とは個人的にもいろいろお話ししましたが、やはり視点がシャープです。宗教倫理学会に対しては、社会の大きなイシューに対しては、具体的な声明や提言を出せるようになるべきだ、とアドバイスしてくれました。その通りだと思いました。大きい学会では、意思統一するのがきわめて困難ですが、宗教倫理学会は小回りの良さを生かして、もっと積極的に情報発信、意見表明を行っていくべきだと、つくづく思いました。

 懇親会は、寒梅館7階のSecond House Willで行われました(貸し切り!)。京大の落合恵美子先生も来られており、最近の研究の様子などを聞くことができました。各国の家族形態についての研究を目下進めておられます。朝日新聞などで、その研究成果の一端をご覧になった方も多いのではないかと思います。

 わたしは金曜日くらいから風邪を引いてしまい、体調不良の中での出席でしたが、一応割り当てられていたお役をこなすことができ、ほっとすると同時に、朝から晩まで一日仕事だったので、どっと疲れてしまいました。これでは、風邪が治りませんね。(^_^;)

 昨日、2003年度採択分の「21世紀COEプログラム」の中間評価が発表され、今日の新聞でその一部が報道されていました。
 同志社大学の「一神教の学際的研究――文明の共存と安全保障の視点から」は、A, B, C, D評価の内のBでした。研究の着眼点・ユニークさなどは高く評価されていましたが、世界水準の拠点となるためには「努力が必要」と評価されました。
 中間時点でB評価をいただいた方が、今後、ステップアップしてA評価で有終の美を飾ろうという発憤材料になりますので、ありがたいです(苦しい言い訳? (^_^;))。

 関連記事はいくつかありますが、比較的詳しく扱っているのが、Yokoさんがコメントで紹介してくださった『京都新聞』記事です。Yokoさんは、当事者より情報のキャッチが早いです。

http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2005101200055

 記事末尾に、わたしのコメントが入った「京都・宗教系大学院連合」の紹介もされています。実は、昨日、京大記者クラブでCOE評価に関する記者会見を行いました。そこで、「一神教と多神教の比較研究もやっていますよ」という一例として、「京都・宗教系大学院連合」のことに触れたのですが、記者の関心はこちらに集中してしまい、結局、上記のような記事になったのだと思います。
 しかし、COEの目的達成のために、「京都・宗教系大学院連合」を設立したわけではありませんので、上記記事はちょっと誤解を与えかねませんね。あくまでも、両者は研究上のパートナーです。

 COEプログラムはあと2年半残っていますが、我々の研究は「学際・総合・新領域」で採択されており、まさに学際的分野を開拓している途上ですから、一朝一夕に成果が出るものではありません。しかし、短期的な期待に沿えるよう努力をしつつ、同時に、長期的な展望をもった、しっかりとした土台作りを続けていきたいと思っています。「文明の共存」に対する答えを5年で出せるわけありませんからね。

 昨日紹介した記事内容に関連して、すでにYokoさんがコメントで指摘してくださっていますが、メルケル首相誕生、CDU/CSUとSPDの大連立で決着がつきそうです。
 初の女性首相、初の旧東ドイツ出身の首相ということで話題性はありますが、ドイツ新政権はどうなることやら。
 二大政党の両方が過半数をとることができず、少数野党に票が流れたということは、両党とも十分な国民的支持を得ることができなかったことを意味しています。にもかかわらず、二大政党で閣僚を山分けする、というのは考えてみれば変な話ですが、政治の世界ではやむを得ません。
 これまでは緑の党などの小さな党の意見も連立政権の中で反映されてきましたが、今後、新たな大連立の中で、少数野党の声が反映されるのかどうかは、かなり怪しくなるでしょう。
 いずれにせよ、政策的には新政権はCDU/CSUとSPDそれぞれの主張の中道をいくことになるのではないかと思います。しかし、サッチャー元英国首相にたとえられるメルケル氏のことですから、首相になって豪腕ぶりを発揮するのかもしれません。
 トルコのEU加盟問題に関しては、両党は完全に対立していましたから、今後、メルケル首相のもと、どういう道をたどるのか目が離せません。

asahi051007e 『朝日新聞』10月7日夕刊に掲載された記事を小原克博 On-Line にアップしました。まずはご一読ください。

 ドイツ総選挙とトルコEU加盟問題の両方を扱った内容なのですが、この内容に落ち着くまで紆余曲折がありました。
 実は、記事の元となる原稿は、ドイツ総選挙前(9月中旬)にはできあがっていました。そのときには、CDU・CSU勝利、メルケル首相誕生を想定して書いたのですが(どのニュース・ソースも似たような予想をしていました)、ふたを開けてみると、予想を裏切る混戦模様となり、原稿を書き換えざるを得なくなりました。
 選挙結果にあわせて書き直し、掲載のタイミングをうかがっている間に、連立の行方がますます混迷の相を深め、それに加えて、トルコ加盟交渉へのオーストリア乱入などがあって、再度、書き直すことになりました。
 総選挙後、これほどドイツやEUを取り巻く状況が流動化するとは思いもしていませんでした。担当記者と連日のように情報交換し、最新のニュースに目をこらして原稿の書き直しを続けたのは大変でしたが、結果的によい勉強になりました。

「独総選挙に見るトルコEU加盟問題」(『朝日新聞』10/7)

 「京都・宗教系大学院連合」の紹介記事が本日の『読売新聞』夕刊に掲載されましたので紹介します。実物はまだ見ていませんが、ウェブでは次のページになります。
http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20051008p202.htm

 これは大阪本社版で、Yokoさんがコメントで紹介してくださった次のページは東京本社版(?)ではないかと思います。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20051008ic09.htm

 では、少し裏話を。
 正式なプレス・リリースは来週に予定しているのですが、読売新聞は設立準備委員会の段階から情報をキャッチし、関心を示し続けてくださっていました。ウェブサイトもすでに公開していますので、プレス・リリース前の取材に応じました。
 限られた字数の中でよくまとめてくださっていると思います。
 ただし、「危機感を募らせた各大学院は・・・」のくだりは、ちょっと誤解を与えそうです。そもそもの動機は、大学冬の時代に対する危機感というより、純粋に学生に対する刺激的な教育環境の提供や、世界にアピールできる研究の連合体の形成にあります。結果として、各大学の学生リクルーティングに寄与できれば、すばらしいとは思いますが、それは副次的な効果と考えています。

 記事中、わたしのコメントは次のように記されています。

欧州連合(EU)に、イスラム教徒の多いトルコが加わろうとする時代で、大学院連合事務局長を務める同志社大の小原克博教授(比較宗教倫理学)は「異なる 宗教の人々を理解するには、宗教的な知識も身につけている方がいい。ほかの宗教、宗派を学ぶ必要性はますます高まる」と話す。

 トルコのEU加盟問題については、昨日の『朝日新聞』夕刊に少し長めの記事を書きました。これについては、明日にでも紹介したいと思います。

 『読売新聞』がらみで、もう一つウェブ上の記事を紹介しておきます。

http://osaka.yomiuri.co.jp/kokorop/kp51005a.htm

 9月末から秋学期が始まって、1週間が経ちました。
 授業の準備で追われるだけでなく、学生に推薦状を書いたり、大学院進学の指導をしたり、面談をしたり、等々で、一気に夏休みボケが吹き飛んでしまいました。
 決してローギヤーで夏を過ごしていたわけではないのですが、こうやって新学期が始まると、夏休みモードとの落差をはっきりと認識させられます。

 いろいろと、お知らせすべき事もあるように思うのですが、まず思いつつくままに、いくつか紹介しておきます。

 秋学期の授業開始にともない、「神学部オープンコース」も再開です。すでに森先生、野本先生の授業をアップしています。わたしのものは、パワーポイントとの同期作業がまだ終わっていないので、もうしばらくお待ちを。
 野本先生は、今年度でご退職されますので、この秋学期の授業がまさに最後の授業となります。その意味では、秋学期の「聖書の神学」は、最後の締めくくりにふさわしい内容となりそうです。

 

「京都・宗教系大学院連合」のウェブサイトも、ちょこちょこと更新を続けてきて、少しずつましなものになってきました。
 評論家の加藤周一氏を講師として招く「設立記念シンポジウム」(2005年1月7日)の簡単な案内も掲載しました。詳細については、後日お知らせいたします。「京都・宗教系大学院連合」のお披露目式として、充実した内容にしたいと考えています。

You are the
 th Visitor
 since 01/07/2004.

自己紹介

近  著

2013年10月

    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

月別 アーカイブ