数日前、ドイツのフィルム・メーカーの老舗アグファが倒産したとのニュースを目にしました。アグファは、日本の富士フイルム、アメリカのイーストマン・コダックと並んで、世界の三大フィルム・ブランドの一つでした。
日本では、富士やコダックが強かったので、アグファはあまり知られていないかもしれません。しかし、わたしはドイツ留学中に写した膨大な数の写真(ほとんどがスライド・フィルム)のほとんどは、アグファのフィルムであっただけに旧友を失ったような哀しさがあります。
アグファ倒産の理由は、言うまでもなく、デジタルカメラらの急速な普及です。かくいう私も、近年、フィルム・カメラを使ったことはほとんどありません。
「小原克博 写真館」のエジプトの写真も、すべてアグファのフィルムからスキャンしたものです。まだ大量のリバーサル・フィルムが残っていますが、劣化する前に何とかスキャンして、「写真館」に少しずつ追加していくことができればと思っています。
小原克博: 2005年5月アーカイブ
今日は、United Board for Christian Higher Education in Asia の President であるRichard J. Wood氏が同志社大学を訪ねてくださり、1時間ほど話をしました。Wood氏は、イェール大学のDivinity Schoolの部長を務めるなど、Administration関係でも実績のある人物です。
仲介者は、竹中正夫先生(同志社大学名誉教授)。もう80歳近い(もう越えてるかも…)はずですが、昔と変わらずお元気そのもので、いつも感心させられます。英語表現も非常に的確で(と浅学の私が言うのも変ですが)、さすが「世界の竹中」です。(^_^;) 実際、竹中先生は世界キリスト教協議会(WCC)を中心としたエキュメニカル運動に長年関わってこられ、世界中に幅広い人脈をお持ちです。
Wood氏はCISMORの活動に大きな関心を示してくださったので、これまでの活動を報告書を交えながら説明しました。
7月に香港で開催されるアジアの神学者の国際ワークショップに私は招待されているのですが、Wood氏そこにもUnited Boardを代表してこられるとのことですので、また近々お会いできそうです。
28日(土)、CISMOR部門研究会の一つ「一神教の再考と文明の対話」研究会の本年度第1回目の研究会が寒梅館で行われました。
今年度のテーマは「正典解釈の多様性と民主主義」。手探り状態での出発ですが、初回はユダヤ学に焦点を当てて、手島先生(大阪産業大学)と市川先生(東大)に発表をしていただきました。お二人とも、この分野での第一人者ですから、濃密なお話を聞くことができました。
正典の位置づけや解釈のスタイルは、ユダヤ教・キリスト教・イスラームそれぞれの中で、固有の幅があるだけでなく、それら相互の間にも共通点・相違点があって、やりがいがありそうです。
少なくとも国内では、こうした比較研究はほとんどされてきませんでしたので、基礎研究としての意味は十分にあると思います。
米・ニューズウィーク誌が、ガンタナモ収容所で、ムスリムの収容者を辱めるためにコーランを便所に流しているとの情報を掲載し、アフガニスタンでの反米デモに火を付けたことが報じられました。この事件からもわかるように、ムスリムにとってのコーランの位置づけには独特なものがあります。
人が敬意を払っているものに対しては、理解できずとも、敬意を払う、という当たり前のことが異文化理解の第一歩であると思います。
今晩は、ドイツ連邦議会の議員さんたちと、パスカル・ペニョで夕食を共にしました。
パスカル・ペニョは雑誌などで紹介されることの多い有名なお店らしいです。京都の長屋を生かした落ち着いた雰囲気の中で、フランス料理をいただくことができます。
「日本におけるドイツ年」との関係もあるようですが、連邦議会の「文化・メディア委員会」の代表団たちが、今回、日本を訪れました。
東京で、文化庁や外務省等々を訪ねた後、愛知万博に立ち寄って、それから京都にやってきました。1週間という短い滞在期間だったようですが、最後に京都観光ができてよかったと、喜んでいました。
ドイツ総領事館からお声がかかり、もっとこじんまりしたものかなと思っていたのですが、議員さんたち10名の他、関係スタッフなども入れて、かなりの人数だったので、少しびっくりしました。
もう完全にドイツ語の世界! わたしも早々に英語でしゃべることは諦めて、つたないドイツ語に切り替えました。
CDU、FDP、緑の党など、いろいろな議員さんたちがいたのは、わたしにとって興味深かったのですが、わたしの前にいた女性議員との話が特に印象に残りました。
彼女は、旧・東ドイツに住んでいて、ベルリンの壁が崩壊する前後の出来事が、東ドイツからどのように見えたのか、ということを詳細に話してくれました。壁の向こう側に行ってもよいことになった、という噂が最初流れたそうですが、そのときは「そんな馬鹿な冗談やめろ!」と誰も信じなかったそうです。
東ドイツ時代にいかに自由が束縛されていたか、ということについても話してくれました。ちなみに、その女性議員は哲学と神学を大学で勉強したとのことで、わたしが神学部の教員だというと、えらく関心を寄せ、あれこれと日本の宗教事情についても聞いてきました。
わたしは大して役に立っていないように思うのですが、機会あるごとに、招待してくれるドイツ総領事館の器量の大きさに感謝したいと思います。
今日は、京田辺キャンパスで、JR脱線事故と福島でのバス事故の犠牲者のための「祈りと黙想の集い」を担当しました。
空は雲一つなく晴れ渡り、木々の緑がまぶしいばかりに映えるキャンパスの中央で、その雰囲気を謳歌するかのごとく闊歩する学生たちを横目に見ながら、犠牲者の方々をおぼえて祈る、というのは、ひとしお、生と死のコントラストを考えさせられる時間でもありました。
1ヶ月の節目などにはたくさんの学生が参列したことが新聞等でも報じられていましたが、普段の参加者は、さほど多くはないとのことです。今日の参加者もごくわずかでした。しかし、人数の多少に関わらず、こうした祈りの時間が持たれているというのは、同志社らしい、よいことだと思います。
木曜日は、京田辺キャンパスで、同志社科目「建学の精神とキリスト教」を担当しているのですが、同志社の歴史に関しては専門外なので、毎回の準備は大変です。ほぼ毎回、徹夜に近い状態で準備をし、朝を迎えるたびに、来週はもう少し早めに準備しようと固く心に誓うのですが、なかなかそうもいきません。
しかし、辛いながらも、学ぶことは多く、発見の連続です。今日は、デイヴィスやラーネッドら新島と共に初期の同志社を支えた宣教師たちについて話しましたが、この時代の人たちの偉大さには脱帽です。徳富蘇峰ら、「熊本バンド」と呼ばれた学生たちの活躍ぶりも目を見張るものがあります。
最後に、デイヴィス記念講堂、ラーネッド図書館に刻まれた、彼らの言葉を記しておきます。
Davis, "My life is my message."
「我が人生が我が遺言」
Larned, "Learn to live, live to learn."
「生きるために学べ、学ぶために生きよ」
彼らの人生と照らし合わせて、これらの言葉に向き合うと、かなりガツンときます。学生たちにも、それを受けてくれていたようでした。
■建学の精神とキリスト教
http://theology.doshisha.ac.jp/opencourse/kohara_03.html
5月19日のニマー氏の講演の動画コンテンツをCISMORウェブサイトにアップしました。日本語要旨はまだですが、英語要旨はすでに掲載されています。
最近、Webの更新頻度が高くなっています。アラビア語ページはまだ未完成部分が多いですが、英語ページはかなりよくなってきました。
講演会等の報告をするのは当然のこととして、今年度は何か新種のコンテンツを追加できればと思っています。名案があれば教えてください。(^_^;)
■「中東における宗教間対話の課題」
http://www.cismor.jp/jp/research/lectures/050519.html
今日はレズラズィさんと、CISMORの新しい研究プロジェクト「教育と宗教政策――中東の教科書における非イスラーム宗教のイメージとその意味」の立ち上げについて話し合いました。
アメリカや中東各国の関連研究機関とネットワークを作り、CISMORがホストになって企画を進めていくのですが、いきなり大それたことはできませんので、ぼちぼちやっていこうということになりました。
研究規模はともかくとして、教科書の分析を通じて、中東における動向を探っていくのは非常に興味深いものです。たとえば、イラクでは、1991年(湾岸戦争) 、2003年(サダム・フセイン政権の崩壊)といった時期を節目として、教科書における宗教の記述が大きく変わってきています。
伝統的には、多くのイスラーム国では、イスラームを最高の宗教に位置づけ、ごく部分的に、その中で、ユダヤ教やキリスト教について(しばしば否定的に)語ることが多かったようです。
ちなみにレズラズィさんが子どもの頃、キリスト教は三つの神を信じる間違った宗教だと教えられ、その三つの神とは、創造者なる神、イエス、マリアだと教えられたとのことです。もちろん、これはコーランの記述に由来します。
たとえば、キリスト教の三位一体論批判として、コーラン5,73には次のような箇所があります(井筒俊彦訳)。
「まことに、神こそは三の第三」などと言う者は無信の徒。神というからにはただ独りの神しかありはせぬはず。あのようなことを言うのを止めないと、無信の徒は、やがて苦しい天罰を蒙ろうぞ。
レズラズィさんは、日本に来てはじめて、キリスト教の三位一体論が創造者なる神、イエスそして「マリア」ではなく、三番目が正しくは「聖霊」であるということを知って、驚いたとのことでした。やはり教科書の影響力は侮れません。
教科書の他に、モスクでの説教、メディアからどのような影響を受けるのか、年齢別にも検討していく予定です。
中国における反日デモを主導した若い世代は、反日的な内容の教科書によって育ってきたことが、よく指摘されています。日本の教科書問題も大きな課題ですが、中東世界において、若い世代がどのような教科書で、どのような教育を受けるか、というのは、今後の平和構築に大きな影響を及ぼすことが予想されます。
アメリカ政府は、教科書の「民主化」を進めようと、かなりてこ入れしようとしている様子ですが、それとは違うスタンスで中東の状況を見ることができればと思っています。
日本の外務省も、教育関係にはODAを出したいという気持ちがあるものの、そこに宗教がからむか、からまないかの見極めが難しく、二の足を踏むことが多いようです。ODAで立てた学校で、イスラーム過激思想が教えられていたことが後になってわかる、という失敗例もあるようです。
■CISMOR講演会「マスメディアと宗教――日本のマスメディアによるイスラーム世界の報道」(3月12日)
http://www.cismor.jp/jp/research/lectures/050312.html
5月20-21日、同志社びわこリトリートセンターでゼミ合宿を行いました。
初日の夕食はバーベキュー。以前は炭火焼きだったようなのですが、最近は合理化されて(?)、ガスボンベによるコンロでのバーベキューとなっています。時間をかけて炭火で焼くのも味わいがあると思うのですが、手っ取り早くやるには、コンロ形式は確かに便利です。到着後、みなお腹を空かしており、とても待ちきれない状況でしたので、着火後すぐに焼き始めることのできるコンロは、空腹の学生たちにはよかったのかもしれません(と言いつつ、一番最初に箸をつけていたのは、わたしであったような気がしますが(^_^;))。
初日は一人発表してもらった後は、自由時間。結局、朝方の4時頃まで話し込んでしまいました。「このあたりは星がきれいだよ」とか言って、外に出てみると、すでに空がぼんやりと白ずんでいて、星どころではなく、朝の空けるのが早いことを実感しました。
眠さをこらえながら、7:30には朝食を食べ、その後は、スピーチ・トレーニング。ゼミ合宿では、全員に5分間スピーチをしてもらい、それを多角的に分析・評価していきます。
今回からはビデオ撮影も加えて、自分自身のスピーチのクセを客観的に理解してもらうことにしました。録画したものをDVDで各人に配付して、自分の弱点克服に役立ててもらおうと思っています。
わたしは、結局、3週連続で毎週末、びわこリトリートセンターにお世話になりました。ちょっとくたびれましたが、学生たちとの親睦を深めるよい機会になりました。
昨日紹介したニマー氏による講演会「中東における宗教間対話の課題」が開催されました。わたしはこのために、京田辺キャンパスでの授業を休講にしました。1年生たちも来ており、休講にした甲斐がありました。
この講演は非常にわかりやすく、中東の現状や歴史的経緯を知る上で貴重な機会になったように思います。
ニマー氏のスタンスは、平均的なムスリムの理解とは異なるかもしれませんが、こういう人がいるのかと思うと、希望が持てるような内容でした。
ニマー氏は、自らの幼少時代を振り借りながら、ユダヤ教・キリスト教・イスラームは対立するものではないこと、信仰の違いが紛争の原因ではなく、社会の不正義こそが問題の根っこにあることを説かれました。
中東問題がこじれ、社会が不安定になっていく中で、各国にいたクリスチャンたちがいづらくなり、クリスチャン人口が減少していることを説明しながら、同時に、それは中東世界にとって、決してよいことではないのだ、と力強く語っていました。
なるべく早い時期に、この講演会の要旨や動画をアップしたいと思います。
■CISMOR講演会「中東における宗教間対話の課題」
http://www.cismor.jp/jp/research/lectures/050519.html
明日、講演してもらうことになっているハッサン・アブ・ニマー(ヨルダン・王立宗教間対話研究所所長、元ヨルダン国連大使)氏らと夕食を共にしました。写真中央がニマー氏で、その左は慶応大学のグローバル・セキュリティ研究所所長のアフタブ・セット氏。セット氏は元インド大使。
外交経験豊かな二人を囲んでの歓談は、知らない世界をのぞき見る知的興奮にあふれていました。
実は、このお二人はCISMORの活動を非常に高く評価してくださっており、ヨルダン・王立宗教間対話研究所とは具体的な交流協定を結ぶことになりそうです。
ヨルダンは、中東世界の中でもかなり自由な雰囲気のある国であることを噂には聞いていましたが、今回、そのことを多少なりとも実感することができました。
わたしは、これまで仏教とキリスト教の対話に実践的に取り組んできましたが、そういう経験を、中東世界における宗教間対話の取り組みにも接続していくことができればと思いました。先方は、そういうジョイントに非常に大きな関心を示してくれています。
■ヨルダン・王立宗教間対話研究所
http://www.riifs.org/
CISMORの World Watch News に Vol. 2 イスラエル特集を追加しました。
昨年のイスラエル旅行の中から、三つのシーンをピックアップして編集しました。それぞれに解説が付いているので、わかりやすいと思います。わたしも少し登場しています。かなり希少価値のある映像ですので、ぜひご覧ください。メシアニック・ジューなんて、普通、お目にかかれませんよ。
DVDもできあがっているので、DVDが欲しい人はCISMOR事務局に申し込んでください(無料!)。
World Watch Newsだけでなく、これまでのCISMOR関係の講演会すべてにストリーミング・コンテンツが追加されています。COE関係サイトで、これだけの徹底した情報公開をしているところは他にないと思います。
CISMORサイトをメンテする上で、もっとも大変なのは、日本語・英語・アラビア語の三言語で情報発信している点です。すべてをup-to-dateに保つのは容易ではありません。
■一神教学際研究センター World Watch News
http://www.cismor.jp/jp/info/wwn/index.html
日本オープンコースウェア連絡会というのが5月13日に発足し、大阪大学、京都大学、慶應義塾大学、東京工業大学、東京大学、早稲田大学の6大学が加盟しています。
ショックだったのは、こういう動きがあることが、どこからも伝わってこなかったこと。いや~、まさに寝耳に水の出来事でした。こっそり、やってたんですね~。
こういうのに、これからどう関わっていこうかと、目下、思案中です。もちろん、大学間での協定となると、わたし一人が悩んだところで何にもなりませんが・・・
一つ、驚くべき事実を発見。Googleで「オープンコース」で検索してみてください。ご立派な上記、日本OCW連絡会がヒットすると思いきや、トップに出てきたのは、何と「神学部オープンコース」! 落涙ものですね。ちょっと信じがたいですが、なぜか今のところ、そうなっています。
■日本OCW連絡会
http://www.jocw.jp/
■神学部オープンコース
http://theology.doshisha.ac.jp/opencourse/index.html
昨日の朝日新聞に手塚治虫文化賞の受賞作品が紹介されていましたが、その中の一つ「新生賞」に、このBLOGでも紹介した(左の「本の紹介」にもありますが)こうの史代の 『夕凪の街 桜の国』が選ばれていました。私は内容に関心を引かれましたが、マンガとしても非常に高い評価を受けている記事を興味深く読みました。
ちなみに、大賞は浦沢直樹の『PLUTO』。わたしは全然知らなかったのですが、「鉄腕アトム」がモデルになっているようです。評価記事を読む限りでは、かなりおもしろそうなので、読んでみたいと思っています。
今日は仕事で東京に来ています(用事は明日)。
市ヶ谷に宿泊していますが、宿泊しているホテルにはLANがつながっていたので、今日行ったばかりの宗教学6のオープンコースのコンテンツをアップしました。
外国のホテルでも、最近はLANを装備しているところが増えてきていますが、だいたいが有料。日本は無料のところが多いので、助かります。
月曜日の授業が終わって、東京に向かい、こちらでの仕事が終わって京都に戻ると、火曜日夕方からは、キャンパスプラザ京都で、大学コンソーシアム科目「宗教と倫理」の授業を担当します。ゴールデンウィークが明けて、いきなりタイトスケジュールなのですが、仕方ありませんね。
5月7~8日、同志社びわこリトリートセンターで新入生キャンプを行いました。
右の写真は、日曜日の早天礼拝の一こまです。
BLOGの更新がすっかり滞っていたのですが、新入生や上級生から、このBLOGを見ている、ということを聞いて、もうちょっとまめに更新しなければと、少し反省いたしました。
各教員の紹介を上級生がしてくれたのですが、このBLOGから仕入れたと思われる裏ネタも使われていました。
昨年、このBLOGで、中田先生が毎土曜日朝、セーラームーンを見るのを楽しみにしている、というネタを軽い気持ちで書いたのですが(→2004年3月6日記事参照)、これが学生にはけっこうインパクトがあったらしく、一気に広まってしまいました。今年も、セーラームーンの中田先生という紹介をされており、中田先生には悪いことをしたような気持ちを持つ反面、ハードライナーのムスリムというイメージとのバランスを取る意味では、よかったかなと勝手な解釈をしたりしています。(^_^;)
ちなみに、中田先生は「びわこワンワン王国」(残念ながら、営業悪化で閉鎖)で目撃されたという新情報も紹介されていました。
th Visitor
since 01/07/2004.