タリバーン来訪
3月2日、Afghan Reconciliation and Peace-Building の第二弾として、クローズドな研究会を開催しました。
アフガニスタンから、タリバーンと関わりの深い Motawakil 氏を招きました。Motawakil 氏はパストゥーン語を話されるので、それを同行された通訳の方(Nazar氏)が英語にする形で議論をしました。
右写真の右から二番目がMotawakil 氏です。ちなみに左でカメラを構えているのは、アフガニスタンで捕虜として捕まったジャーナリストの常岡さんです。今回も来てくださいました。
Motawakil 氏は9.11同時多発テロ事件が起こったときのタリバーン政権の外務大臣でした。タリバーンは9.11に関与していない、との報道を世界に発表した人物です。ただし、その後のことは説明するまでもなく、アメリカによるアフガン空爆により、タリバーン政権は一度は完全崩壊し、現在のカルザイ政権が誕生しました。
Motawakil 氏は、現在、タリバーン本体を離れ、ピース・ジルガに参画する形で現政権と関わっています。
先に説明したような事情があったため、一時期、Motawakil 氏はアメリカからテロリストとして指名されていました。現在は解除されています。解除されていなければ、そもそも日本に入国できませんが、おそらくアメリカに入るのは無理だと思います。もちろん、彼自身、多くの仲間の命を奪った国アメリカに行こうとはまったく考えていないと思いますが。
CISMORも、タリバーンの重要人物 Motawakil 氏をいきなり呼ぶことは難しいです。しかし、カルザイ大統領が同志社を訪ね、また11月のCISMOR研究会でサバウーン大臣をお招きした(→11月29日記事)という下地がありますので、今回のようなきわめて貴重な機会を実現することができました。
タリバーンと聞いて、ポジティブな印象を持つ人は少ないことでしょう。しかし、今後のアフガン復興を考えると、彼らの存在抜きに物事を進めることはできません。軍事的に追い詰めるという行為が、果たしてアフガンに秩序と平和をもたらしてきたのかどうかを国際社会は考える必要があるでしょう。暴力的衝突を少しでも回避していくための対話や協力が求められています。
議論は多岐にわたりましたが、以下に、わかりやすいポイントにしぼったメモをつけておきます。
Taliban's ideals and reality under its regime 1996-2001: Reflections on the past errors and mistakes, strategies of the present, and prospects for the future
H.E. Rev. Mawlawi Wakil Ahmad Motawakil
アフガンには政府と反対勢力の間に大きな緊張がある。アフガンにとっての問題は、NATOであり、アルカイダである。
タリバーンに対する理解は、アフガン人とアメリカ人との間に大きな隔たりがある。アフガンには三つの政府がある。アフガン政府、NATO政府、タリバーン政府。これらの間には、きちんとしたコミュニケーションが成立していない。
私はタリバーンを代表して語るわけではないが、タリバーンのことを熟知している。2、3年前、私はNATOの捕虜になっていた。
歴史的にはアフガニスタンと日本は良好な関係を維持してきた。同志社がカルザイ大統領を招き、また前回、サバウーン大臣を招いたことに、私は驚くと共に大きな関心を持った。
(コメント)タリバーンの生の声を直接に聞くことができたのはすばらしい。昨日、カルザイ大統領がタリバーンに書簡を送ったというニュースを聞いた。これは、平和構築のために、タリバーンが欠くことのできない一部であることを示している。タリバーンは国際社会との関係をもつ必要があるのではないか。もちろん、国際社会はタリバーンのイメージを変えなければならない。
タリバーンが1994年に現れたとき、「タリバーン運動」と呼ばれていた。その後、軍事的な機能を強化していった。大きな軍事衝突なしに、タリバーンは勢力を拡大していった。タリバーンは蛮族を追い払い、アフガニスタンに秩序を回復していった。人々は安定と平和を求めていたので、タリバーンは人々に急速に受け入れられていった。
タリバーンは今や運動としてではなく、「タリバーン」と自称する。タリバーンは多くの賛同者を受け入れていったが、同時に、それが誤解を生む原因にもなった。
カルザイ政権がタリバーンに関心を持つとすれば、タリバーン側はどのような条件を示すのか。あるいは両者の根本的な違いは何か。
(Motawakil)我々は議論のテーブルに着く用意がある。しかし、腐敗やドラッグをタリバーンが受け入れることはない。
(質問)穏健的なタリバーンとは対話できるが、ラディカルなタリバーンは対話すら拒否するといったイメージがあるが、タリバーンの統一性について聞きたい。
(Motawakil)タリバーンはそもそも「学生」という意味である。共産主義とムジャヒディーンの戦いの苦い経験から、タリバーンは組織の統一性に関心を払っている。我々は一人の代表、一人のスポークスマンを持っており、内部の各部署もすべて最高評議会につながっている。
(質問)ピース・ジルガにとってもっとも重要なAgendaは何か。
(Motawakil)我々は二つの目的を持っている。自由とIslamic goverence。自由の意味は、占領軍からの解放ということ。「和解」は大切だが、NATOとの関係を決定するのは、我々の権利である。
(質問)ジハードについて、どのように考えるか。
(Motawakil)ジハードに関して、タリバーンは国際的な計画はもっておらず、もっぱら自衛の意味で用いている。自衛は義務である。他国に向かって攻撃することはない。
(質問)タリバーンは女性の教育を否定していたというイメージを国際社会は持っているが、現在、その問題はどのようになっているか。
(Motawakil)男女の別はあるが、両方に教育が与えられている。両者とも同じカリキュラムで教えられている。同じ場所で、ただ隔てられているだけである。それはイスラーム的な理由というより、男女を一緒にすると男子が女子をからかったりするという実際的な問題による。