「ヨーロッパ」という自己理解と一神教
CISMOR国際ワークショップの初日を無事終えることができました。今年は、ヨーロッパに焦点を当てています。ある意味、宗教が関連したやっかいな事件は、アメリカよりヨーロッパにおいて多発しています。しかし、ヨーロッパのことはアメリカと比べると、あまり十分には紹介されていないというのが現状であると思います。
午前中の公開シンポジウム(右写真はその一場面)には200名近い来場者がありましたが、おそらく多くの来場者は、ヨーロッパの現実の一面を知ることができたと思います。
公開シンポジウムの概要を説明するのは大変ですが、CISMOR講演会の常連のSさんより、的確な感想をいただきましたので、内容説明の代わりに紹介させていただきます。
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ヨーロッパの状況がよく分かるシンポジウムだったと思いました。
特にラマダーンさんとボザルスランさんの間の応答を興味深く聞きました。
現実には混合主義が進み日々変化しているし、改革の方向性にあるというボザルスランさんに対し、認識を同じくしながらも「しかし、どこまで?」というラマダーンさんの問いは、とても重要だと思いました。
ムスリム内部での対話と共に、外部との対話も大切だと感じます。
ヨーロッパの寛容概念が「受け入れるが認めない」ということ、ムスリムは世俗主義を「民主主義ではなく独裁主義」と認識してきたということなど、知ることができました。
クリストファーセンさんの「ヨーロッパの市民が宗教のみで再定義されてしまうのではないか」という恐れは、私たち日本においても、様々な細部の差異で区別(差別)してしまうことと似通っているという印象を持ちました。
最後にラマダーンさんの「草の根レベルでも共同作業が必要」ということを聞いて、私のような一般の市民が、知識を得る目的だけでなくて、このシンポジウムに参加する意味を見いだせて、嬉しく思いました。
公開していただいて、ありがとうございました。
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午後はクローズドなワークショップが続きました。タリク・ラマダーン氏がスピーカーとなり、2時間近い質疑応答がなされました。
ラマダーン氏は、ヨーロッパ在住のムスリムとしてはもっとも知名度が高い人物ですが、非常に気さくで、シャープな思考の持ち主でした。
こういう人がもっと多くいれば、ヨーロッパにおけるイスラムの位置づけも大きく変わっていくのではないかと感じさせられました。
右の写真は、レセプションのときに撮ってもらったツーショット写真。彼はアメリカ政府から入国拒否されているのですが、「私と一緒の写真がアメリカ政府にわたったら、あなたもアメリカに入国できなくなるかもしれないよ」と冗談を言っていました。
こういう写真を撮るのはいかにもミーハーな感じがしますが、内藤正典先生(一橋大学)もラマダーン氏とのツーショットを望まれ、私が撮影しました。
ちなみに、内藤先生のヨーロッパ通ぶりには、ヨーロッパからの参加者も驚いていました。さすがです。