EUとイスラームの関係
今日は、CISMORの「EUにおける宗教政策」研究会の一環として、一橋大学の内藤正典先生をお呼びして、「トルコのEU加盟問題からみたヨーロッパとイスラーム世界の関係」と題して、お話をしていただきました。
内藤先生は、一橋大学COEプログラム「ヨーロッパの革新的研究拠点」の副代表でもあります。
レジュメの内容は下記の通りでした。
1.トルコのEU加盟交渉の経緯と背景
*トルコはなにゆえ加盟したいのか(歴史的経緯)
*エルドアン政権にとっての実利
2.ブリュッセル首脳会議における各国の反応
*現在の政府首脳の対応
*シニアおよび野党の反応
3.EU諸国における反対理由
*①人権、②男女不平等、③移民流入への恐怖、④宗教の相違、⑤そもそもヨーロッパになじまない、⑤経済開発の遅れ、⑥人口規模
4.EU加盟問題が「イスラームと西欧」との関係に与える影響
*人権問題や民主化の進展を障壁とする→近代的国民国家の問題
*イスラームを障壁とする→根源的にみえるが、ヨーロッパの自己定義としては後退的
トルコ、フランス、ドイツ、オランダなどにおける事情を丁寧に紹介してくださり、大いにまなぶことができました。とりわけ、オランダにおいて、リベラルや多文化主義という言葉が、アメリカ的な文脈で語られる場合とは、かなり違った意味を持っていることを知らされ、新たに考え始めるきっかけを与えられました。
内藤先生については、下記の本がまずはお薦めです。
■内藤正典『ヨーロッパとイスラーム――共生は可能か』岩波書店、2004年(岩波新書905)。
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4004309050/katsuhirkohar-22