鳥取大学医学部で講義
今日は、鳥取大学医学部(米子市)で「動物の権利」についての講義をしました。主に、機能再生医科学専攻の学生さんたちを対象とした講義だったのですが、こうした分野では動物実験を日常的に行っていますので、動物の実験利用について考える前提としての動物観の変遷のようなものを話しました。
動物に対する考え方の基礎は、宗教や哲学によって育まれている部分が大きく、その点でも東洋と西洋とでは比較的はっきりとした違いがあることを説明しました。アジアでは、ジャイナ教や仏教のようにアヒンサー(不殺生)が重要な役割を果たしていますし、その背景には輪廻転生の思想があります。つまり、動物と人間との間には根本的な違いはない、ということです。今は人間でも、来世は動物や他の生命種になる可能性があるからです。
それに対し、西洋史を大きく覆っているのは、人間の動物に対する優越(超越)の考えです。もっとも、近代的な動物権利運動が誕生してきたのは、西洋、とりわけイギリスにおいてでした。
マウスや猫を実験動物として扱っている学生さんたちからは、実情を踏まえた具体的な疑問が次々に出されました。マウスにも愛着がわいてくるし、猫に関しては、なおのことそうです。しかし、実験の対象とし、最後は死んでいく動物たちとの向き合い方が議論されました。
目下、日本学術会議が中心となって動物実験のガイドライン作りが進められていますが、こうした指針を活用しながら、動物をめぐる問題がもっと活発に議論されていくようになればよいと思います。
女性が使う化粧品の多くは、多数の動物(マウスや豚)の犠牲のもとに誕生しています。欧米では、"Animal Test Free"という表示がされた化粧品が多数製品化されていますが、日本ではごくわずかです。目薬を作るときには、ウサギの目が利用されています。
狂牛病や鳥インフルエンザ、遺伝子組み換え食品などに対しては、直接に口に入るものだけに、日本社会は敏感に反応しました。人間自身がそうしたものの犠牲となることを恐れるからです。しかし、動物が犠牲になっていることに対しては、まだまだ無頓着・無関心なのではないでしょうか。