反ユダヤ主義との戦い
他のニュース・ソースでも扱っていると思いますが、わたしがたまたま機内の International Herald Tribune 紙で読んだ記事を簡単に紹介したいと思います。
今週火曜日、イスラエルの外相シルバン・シャローム氏がフランスを訪れました。これには、いきさつがあります。先月、イスラエルのシャロン首相が、フランスでは反ユダヤ主義(anti-Semitism)が高まっているから、在仏のユダヤ人は、そうした社会から逃げ出すべきだ、といった旨の発言をしました。
フランスのシラク首相は、すぐさま反応し、それは誤解であるし、さらなる説明を求める、といった形で、イスラエルとフランスの間がぎくしゃくしていました。
この一件以降、フランスは、反ユダヤ主義を含む民族差別全般への取り組みの姿勢を示し、反ユダヤ主義を特に強く批判していました。
こういったいきさつがあって、シャローム外相は、フランスの基本姿勢を歓迎すると同時に、さらなる行動を求める、といった声明を出したようです。
フランスには、60万人のユダヤ人がおり、その数はヨーロッパの中では一番です。それだけに、イスラエルがフランス社会における反ユダヤ主義的状況に神経をとがらせているのは当然であるとも言えるでしょう。
ただし、フランスは、シオニズム運動(ユダヤ人を中心とした国家を建設しようとする運動)に対しては、批判的な姿勢を示すことが多く、それはイスラエルとフランスとの争点として残っています。
もっとも、フランスには全人口(6千万人)の5%にもおよぶイスラム教徒が住んでいます(300万人)。ユダヤ人のざっと5倍もの人口です。
フランスにとっては、反ユダヤ主義との戦いもさることながら、増加中のイスラム教徒をフランス社会にどのように適応させていくかが、頭痛の種となっています。
数ヶ月前に、公立学校で、ヒジャーブ(イスラム女性がかぶるスカーフ)などの目立った宗教的衣装を付けることを禁止するという決定がなされたばかりです。
宗教的多様性と政教分離原則の間の緊張関係は、まだまだ続きそうです。そして、このことはフランス一国の問題ではなく、隣国のドイツをはじめ、広くはEU全体が今後取り組んでいくべき問題と言えるでしょう。
イスラエルについての基礎情報は、下記の外務省のページから得ることができます。略史の冒頭に「ユダヤ民族の歴史は聖書の創世紀に始まる」とあり、ちょっと首をかしげたくなるような記述もありますが、全体としては、よくまとまっていると思います。
■外務省:イスラエル国
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/israel/index.html