五感を通じた社会性
『朝日新聞』1月17日夕刊の「私の視点」に山極寿一氏(京大・人類学)が書いた「類人猿に学ぶ――身体で習得する平等社会」を興味深く読みました。サルにとっては勝者を作ることが、けんかを収める最適の方法であるのに対し、ゴリラやチンパンジーのような類人猿は、力を持つ者がその力を抑制することによって、共存を可能にする傾向があるといいいます。そして、そういう傾向を人間も引き継いでいるのであり、大事なのは、それは、しぐさや態度で相手の心を察知できるような密接な関係(たとえば、見つめるという行為)によって習得されると指摘しています。しかし、こうした五感を使った関係・社会性が、メールにばかり頼りすぎて失われてきているのではないか、というのです。
わたしも日頃、似たようなことを言っているのですが、それを人類学の視点から説得的に語られて、なるほど!と思ってしまいました。
どうしたら争いや戦争はなくなるのか、と日頃考えるのですが、国際政治といった大舞台で思索するだけでなく、もっと身近なコミュニケーション・レベルに根の深い問題があるのではないかと感じざるを得ませんでした。メール中心のコミュニケーションは、こうした危うさを内包していることに、もう少し自覚的であるべきなのでしょう。
ところで、この山極氏とは、実は昨年11月に行われた「京都文化会議」の分科会でご一緒し、丸一日、共に討議いたしました。今回の記事を読んで、あらためて洞察の深い方であることを確認した思いです。ちなみに、この分科会には、「大脳の記憶メカニズムの解明」で2003年度朝日賞(元旦の新聞で発表)を受賞した宮下保司氏(東京大学医学部教授)も一緒でした。
エライお方がたくさんおられたんだな~、と今頃、しみじみと感じています。そう言えば、ノーベル賞を受賞した生物学者もいました。ことの重大さもわからず、わたしは無邪気に話していましたが・・・ (^_^;)
■京都文化会議
https://www.forumkokoro.jp/
■山極寿一ウェブサイト
https://jinrui.zool.kyoto-u.ac.jp/~yamagiwa/